機能性表示食品になっている牛乳について

機能性表示食品とは平成27年(2015年)、消費者庁が食品の機能性に関する表示基準を定めた制度です。

「整腸作用がある」「脂肪の吸収をスムーズにできる」といった、健康維持につながる食品の機能性を明示しています。食品としての安全性が事業者によって担保されていること、消費者が情報を正確に理解できるような表示が行われていることが付与条件です。

牛乳を使った乳製品にも機能性表示食品の指定を受けたものがあります。

「機能性表示食品の表示について知っておきたい8ポイントルール」

機能性表示食品制度の概要

機能性表示食品には「自主的で合理的な商品選択につながる表示制度」という枠組みがあります。安全性を担保した上で、科学的根拠に基づいた消費者への情報提供が行われています。病気にかかっていない(未成年者、妊産婦(妊娠を計画中の方も含む)、授乳婦も対象)消費者に向けたものであることを前提に生鮮食品をはじめとしたほぼすべての食品で表示が認められています(一部例外があります)また、健康被害が出た場合の情報収集体制も明示する必要があります。

国による安全性及び機能性の審査はありませんが、当該商品販売前に消費者庁長官への届け出が求められます。尚、届け出があった情報は消費者庁のウェブサイトで公開されています。ところで、機能性表示食品のパッケージには目立つ面に機能性表示食品である旨、届け出番号、科学的根拠に基づき消費者庁長官へ提出した内容が記載されています。

摂取量の目安、摂取方法、注意事項も書かれています。また、生鮮食品以外のものについては病気のある方、妊産婦の方向けに開発された商品ではないこと、医薬品ではないので、治療や予防をもくてきとしていないことも併記されています。

病気の方については摂取前に医師、薬剤師と相談するように注意を促してます。健康被害が出た場合の問い合わせ先も表示されています。

安全性及び機能性の評価について

消費者庁長官へ届け出て、ウェブサイトに公開された安全性評価については事業者が国の定めたルールに則り、安全性及び機能性を評価、生産、製造、品質管理の仕組み、健康被害発生時の情報収集体制の構築を行った上で、当該商品の販売開始日の60日前までに届け出ることになっています。

これにより、消費者は商品の安全情報を事前に確認することができます。販売後も消費者庁による監視が行われます。

安全性についてはこれまで多くの人に食べられていたかをチェックする食経験、安全性に関する既存情報の確認、動物や人を使った安全性試験の実施による医薬品との相互作用といったことを実施しています。また、機能性の評価は最終製品による臨床試験、最終製品または機能性に関与する成分についての文献調査(研究レビュー)を行っています。

これにより、どのような科学的根拠に基づいて、どのような人がどの程度摂取すると、どういった効果があるのかを示すことができます。

臨床試験による科学的根拠が提示できる場合、パッケージに「〇×の機能があります」と書かれています。

文献調査による場合は「△△の機能があると報告されています」といった表示になります。

研究レビューとは

研究レビューについては肯定的な結果だけでなく、否定的なそれも合わせて、「機能性がある」旨を判断しています。レビューを行う人は研究論文が登録されているデータベースからあらかじめ設定したキーワードで論文を抽出、論文を絞り込み、最終製品や機能性に関与している成分に「機能性あり」と判断できる材料があるのか、検証します。

事業者の恣意的な判断で肯定的な論文だけを選んでいるのではありません。

管理体制と情報収集体制について

生産、製造、品質の管理について、加工食品の場合、製造施設、従業員の衛生管理体制、生鮮食品の場合は生産、採取、漁獲などの衛生管理体制、規格外製品の出荷防止に関する仕組み、機能性関与成分の分析方法に関する耐性の確立が必須になっています。

健康被害に関して、消費者、医療従事者から連絡を受けるため、パッケージに事業者の連絡先が記載されています。届け出番号をキーに消費者庁のウェブサイトにこれらの情報が登録されます。

牛乳をもとに作られた機能性表示食品

牛乳をもとに作られた機能性表示食品として、ヨーグルトがあります。飲むタイプのヨーグルトではビフィズス菌による整腸作用を記載しているケースがあります。また、トリペプチドによって高めの血圧を下げる効果を挙げているもの、難消化性デキストリンによる食後の血糖値、中性脂肪の上昇を緩やかにする効能を書いているものもあります。

睡眠の質を改善するはたらきがあるテアニンを含んだヨーグルト飲料まで登場しています。乳酸菌ヘルベによる目や鼻の不快感緩和作用を明示しているドリンクタイプのヨーグルトもあります。

牛乳から作られた機能性表示食品の評価

乳酸菌ヘルベを含有した機能性食品の基本情報を例に取ると、乳酸菌ヘルベによる肯定的な情報だけでなく、否定的な情報も開示されていました。否定的な情報として、乳酸菌ヘルベを使ったチーズに関する記述があります。

2004年からこの菌を使ったチーズが販売されていますが、これまでに健康被害の報告がないこと、しかしながらこのチーズには含有量の規格がないため、機能性表示食品のガイドラインに基づく食経験による安全性評価としては不十分であるとしています。

ただし、乳酸菌ヘルベは欧州食品安全機関が公開している安全性について評価不要の微生物リスト(QPSリスト)に記載されているため、一定の安全基準を満たしていると考えられます。また、健康な成人10名(血中のハウスダスト、ダニに対する特異的抗体価が陽性で目や鼻の不快感あり)を対象に乳酸菌ヘルベを含んだ発酵乳を1日あたり3×10の9乗となるように摂取量を調整して摂取してもらったところ、摂取前と摂取4週間後に有意な変化があったと報告されています。

柔便や下痢、胃腸炎を訴える被験者も6名いましたが、病状は一時的かつ軽度、診察した医師によると当該食品の副作用ではないと判断されたと書かれています。これにより、届け出を行った食品の3倍相当の乳酸菌ヘルベを含んだ発酵乳を4週間連続摂取しても問題なしと判断した旨を書いて、基本情報を書き終えていました。

機能性表示食品についてのまとめ

機能性表示食品は健康な生活の一助になりますが、たくさん食べれば効果が期待できるといったものではありません。過剰摂取が健康被害につながることもあります。注意事項をよく読んでから取りましょう。また、体調に異変が合った場合はただちに摂取をやめて、医師に相談することが大切です。

パッケージには事業者の連絡先が書かれていますので、連絡を入れるのも重要です。